22 五苓散

五苓散は後漢時代の名医・張仲景が著した『傷寒論』『金匱要略』に収載された処方です。５種 類の生薬で構成されており、もともとは、主薬である猪苓の名をとって「猪苓散」と呼ばれて いました。その後、猪苓湯（沢瀉、猪苓、茯苓、阿膠、滑石）と区別するために、「五味猪苓散」 となり、「五苓散」と名づけられました。五苓散は代的な利水剤で、体内の水分代謝異常を調 整し、浮腫状態では利尿作用、脱水状態では抗利尿作用を発揮する薬です。最近の研究では、 細胞膜上の水透過性に関係するアクアポリン（水チャネル）の阻害作用を有することが分かっ ています。 五苓散とは 類似処方の 使い分け 使用目標 （証） 口渇、尿量減少のあるときに用いられる。一般に、頭痛、悪心・嘔吐、腹痛、下痢、めまい、 浮腫などを伴う。腹部に心窩部振水音を認めることが多い。体質に関わらず広く用いられる。 【脈証】浮滑 基礎・臨床・ EBM ・礒濱洋一郎：炎症・水毒 和漢薬によるアクアポリン水チャネルの機能調節．漢方と最新治療， 　2008，17，p.27. 参考文献：１）「漢方製剤　活用の手引き」（臨床情報センター）、２）　「呼吸器疾患漢方治療のてびき」（協和企画）、 　　　　　「ファーストチョイスの漢方薬」（南山堂）、「漢方診療のレッスン」（金原出版）、ほか 使用目標は似ているが、排尿痛、尿の淋瀝、排尿不快感などを伴う場合に良い。 主に中高年の口渇、頻尿、多尿、排尿痛、夜間尿などの排尿異常、倦怠感、腰 部の冷えや痛みなどがある場合に良い。 頭痛、嘔吐などは似ているが、四肢の冷感、発作性の強い頭痛とそれに伴う嘔 吐が見られる場合に良い。 　　四肢冷感、頭痛、頭重、めまいなどがあり、易疲労感が強く、食欲不振な どの消化器症状を伴う場合に良い。 頭痛、めまい、特に立ちくらみを訴え、口渇や嘔吐が顕著でない場合に用いる。 ・猪苓湯 ・八味地黄丸 ・呉茱萸湯 ・半夏白朮天麻湯 ・苓桂朮甘湯 【虚　実】 効能又は効果 口渇、尿量減少するものの次の諸症：浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪 心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病 （上記はツムラ医療用漢方製剤による） 腎炎（糸球体腎炎）、膀胱炎、上部消化管機能異常（胃アトニー症、胃下垂症）、メニエール病、 三叉神経痛、唾液分泌過多症、帯状疱疹、小児ストロフルス、仮性近視、乗物酔、妊娠悪阻、 胃腸型感冒、水痘 ご れい さん 監修：佐藤 弘・木村 容子（東京女子医科大学東洋医学研究所） 応用疾患・ 症状　※１） ● 浮腫 ● 尿量減少 22 　 五苓散五苓散 虚実 やや実 中間 やや虚 沢瀉、蒼朮、猪苓、茯苓、桂皮 気 水 血 【気血水】 水滞 水毒 めまい 頭痛 口渇・嘔吐 腹痛・下痢 腹証腹証 腹力やや弱 山田光胤1） 振 水 音 軽 度