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小王子日语版

2017-11-12 29页 doc 56KB 179阅读

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小王子日语版小王子日语版 1 だから、七番目の星は地球でした。 地球はそう矢鱈にある星とは違います。そこには、百十一人の王様(もちろん、黒人の王様もいれて)、七千人の地理学者と、九十万人の実業屋と、七百五十万人の呑んだくれと、三億一千一百万人のうぬぼれ、つまり、かれこれ二十億の大人が住んでいるわけです。 電気が発明される前には、六つの大陸全体に四十六万二千五百十一人と言う、まったくの軍隊ほどの点灯夫を雇っておかなければならなかったと言ったら、地球の広さにけんとうがおつきになるでしょう。 少し遠くから見ると、それは、まったく素晴らし...
小王子日语版
小王子日语版 1 だから、七番目の星は地球でした。 地球はそう矢鱈にある星とは違います。そこには、百十一人の王様(もちろん、黒人の王様もいれて)、七千人の地理学者と、九十万人の実業屋と、七百五十万人の呑んだくれと、三億一千一百万人のうぬぼれ、つまり、かれこれ二十億の大人が住んでいるわけです。 電気が発明される前には、六つの大陸全体に四十六万二千五百十一人と言う、まったくの軍隊ほどの点灯夫を雇っておかなければならなかったと言ったら、地球の広さにけんとうがおつきになるでしょう。 少し遠くから見ると、それは、まったく素晴らしい眺めでした。そういう軍隊の動きは、オペラのバレーを踊る人たちのように、規則だっていました。まず最初は、ニュージーランドとオーストラリアの点灯夫たちが、あらわれます。そして、その人たちは、街燈に火をつけると、寝に行ってしまいます。すると、今度は、中国とシベリアの点灯夫達がおどりはじめます。それから、その人たちが、まだ、舞台裏に、ゆらゆらと、消えてなくなります。すると、今度はロシアとインドの点灯夫達が、現れます。それから、アフリカとヨーロッパの点灯夫達、それから、南アメリカの点灯夫たち、それから、北アメリカの点灯夫たち、と言った具合に、ただの一度も、舞台に出る順序を誤ることがありません。まったく素晴らしい見ものでした。 ただ、北極に一つしかない街燈に火をつける男と、南極に一つしかない街燈に火をつける男だけが、何にもせずに、のらくらしていました。二人は、一年に二度、働くだけだったのです。 人は気の利いた事を言おうとすると、なんとなく、うそをつく事があるものです、僕、は点灯夫の話をするときに、どこまでも正直だったとはいえません。だから、相手が、地球のことを知らない人だと、地球について間違った考えを、持たすかもしれません。人間が地球の上に占めている場所は、ほんのわずかです。地球に住んでいる二十億の人が、大きな集会でもするように、もし、心もち列をつめて立ったら、長さ二十マイル、幅二十マイルの広場にらくに入ります。太平洋の、どんな小さな島にでも、人間全体が、積み重なっていられるはずです。 と言ったら、大人たちは、もちろん、うそだと思うでしょう。と言うのも、人間は、沢山の場所を占めていると思っているからです。バオバブと同じように自分をご大層なものと思っているからです。だから、皆さんは、大人たちに、計算なさい、とお勧めなさい。大人たちは、とても、数字が好きなんだから、そう言ったら、喜ぶでしょう。でも、皆さんは、そんなよけいな事で、暇つぶしをしてはいけませんよ。どっちみち、何にもならない事なんですからね。ね、そうでしょう, さて、王子様は、地球に足を踏み入れると、誰もいないので、びっくりしました。星を間違えたのではないかと心配していますと、月の色をした環が、砂の中に動いています。 「こんばんは」と、王子様は別に当てもなしに言いました。 「こんばんは」と、ヘビが言いました。 「ぼく、なんと言う星に落ちてきたのかしら」と王子様はたずねました。 「地球だよ、アフリカだよ」と、へびは答えました。 「ああ、そうか~……じゃ、地球には、誰もいないんだね」 「ここは砂漠だよ。砂漠にゃあ、だあれもいないさ。地球は大きいんだ」と、ヘビが言いました。 1 2 王子さまはとある石に腰をおろして、空を見あけながら言いました。「星が光ってるのは、みんながいつか、自分の星に帰っていけるためなのかなあ。僕の星をごらん。ちょうど、真上に光ってるよ……。だけど、何で遠いんだろう~」 「美しい星だな。なんにしにここに来たの,」 「僕、ある花といざこざがあってね」と、王子さまが言いました。 「ふーん」と、ヘビが言いました。 二人はだまりました。 「人間達はどこにいるの」と、王子様はやっとまた言い出しました。「砂漠ってすこしさびしいね……」 「人間達の所にいたって、やっぱり淋しいさ」と、ヘビが言いました。 王子様は、長いこと、ヘビをながめていましたが、やっとこういいました。「君は、変な動物だなあ、指みたいに細くって……」 「でも、おれ、王様の指より強いぜ」と、ヘビが言いました。 王子様は、にっこりしました。「君は、そう強くないよ……足も持ってやしないじゃないか……旅行だって、出来やしないよ」 「あんたを遠くに運んでいく事にかけちゃ、船なんか、俺にかなやしないよ」ヘビは、そう言って、まるで金の腕輪のように、王子様の足に巻きつきました。そして、また言いました。 「俺が触ったやつぁ、そいつが出てきた地面にもどしてやるんだ。だけど、あんたは、無邪気な人で、おまけに、星からやってきたんだから……」 王子さまはなんとも答えません. 「あんたみたいに弱い人が、こんな、岩でカチカチの地球にやって来るなんて、可哀想だな。もし、あんたが、いつか、あんたの星が、懐かしくてたまらなくなって帰りたくなったら、俺が、あんたを何とか助けてやるよ。それから……」 「ああ、分かったよ、分かったよ。だけど、なぜ君は、なぞのような事ばかり言うのかい」と、王子さまが言いました。 「なぞは、みんな俺がとくさ」と、ヘビが言いました。 そして、二人は黙りました。 王子さまは砂漠をよこぎりましたが、たった一輪の花に出くわしたきりでした。花びらが三つの花でした。まったく、なんでもない花でした…… 「こんにちは」と、王子さまが言いました。 「こんにちは」と、花が言いました。 「人間達はどこにいるの,」と、王子さまは、丁寧にたずねました。 花はある日、隊商の通ってゆくのを見たことがありました。 「人間,六、七人は、いるでしょうね。何年か前に、見かけたことがありましたよ。だけど、どこで会えるか、分かりませんねえ。風に吹かれて歩き回るのです、根がないものだから、大変不自由していま 2 3 すよ」 「さよなら」と、王子様が言いました。 「さよなら」と、花が言いました。 王子さまは、高い山にのぼりました。これまでに知っている山と言えば、ひざの高さぐらいの三つの火山きりでした。そして、休火山のほうは、腰掛けに使っていました。だから、王子様は「こんな高い山からなら、この星の全体と、住んでいる人が、みな、一目で見えるだろう」と、考えました。でも、まるで刃をつきたてたような、とがった岩のほかには、なんにも見えません。 こんにちは」と、王子さまは、別に当てもなく言いました。 「こんにちは……こんにちは……こんにちは……」こだまが答えました。 「あんた、誰,」と、王子さまが言いました。 「あんた、誰……あんた、だれ……あんた、だれ……」と、こだまが答えました。 「僕の友達になってね。僕、一人なんだ」と、王子さまが言いました。 「一人なんだ……一人なんだ……一人なんだ……」と、こだまが答えました。 王子さまは、そのとき考えました。「なんで、変な星だろう。からからで、とんがりだらけで、塩気だらけだ。それに、人間に、味がない。人の言う事のオーム返しにするきりだ……僕の星には花があった。そして、その花は、いつも、こっちからなんにも言わないうちに、ものを言ってたんだがなあ……」 ところで、王子様が、砂原と、岩と雪を踏み分けて、長い事歩いていますと、やっと、一本の道を見つけました。道というものは、みな人のいる所へ、通じているものなのです。 「こんにちは」と、王子さまが言いました。 そこは、バラの花の咲きそろっている庭でした。 「こんにちは」と、バラの花たちが言いました。 王子さまは、バラの花を眺めました。花がみな、遠くに残してきた花に似ているのです。 「あんたたち、だれ,」と、王子さまは、びっくりして聞きました。 「あたくしたち、バラの花ですわ」と、バラの花たちが言いました。 ああ、そうか」そういった王子さまは、大変淋しい気持ちになりました。考えると、遠くに残してきた花は、自分のような花は、世界のどこにもない、と言ったものでした。それだのに、どうでしょう。みると、たった一つの庭で、そっくりそのままの花が、五千ほどもあるのです。王子様は考えました。「もし、あの花が、このありさまを見たら、さぞ困るだろう……やたら咳をして、人 に笑われまいと、死んだ振りをするだろう。そしたら、僕は、あの花を介抱する振りをしなければならなくなるだろう。だって、そうしなかったら、僕をひどい目に合わそうと思って、本当に死んでしまうだろう……」 それから、王子様は、また、こう考えました。「僕は、この世に、たった一つという、めずらしい花を持っているつもりだった。ところが、実は、当たり前のバラの花を、一つ持っているきりだった。あれと、ひざの高さしかない三つの火山ーー火山も一つは、どうかすると、いつまでも火を吹かないかもし 3 4 らないーー僕は、これじゃ、偉い王様なんかになれようがない……」王子さまは、草の上につっぷして泣きました。 すると、そこへキツネが現れました。 「こんにちは」と、キツネが言いました。 「こんにちは」と、王子さまは、丁寧に答えて振り向きましたが、なんにも見えません。 「ここだよ、リンゴの木の下だよ……」と、声が言いました。 「きみ、誰だい, とても綺麗なふうしてるじゃないか……」と、王子さまが言いました。 「俺、キツネだよ」と、キツネが言いました。 「僕と遊ばないかい,ぼく、本当に悲しいんだから……」と、王子さまは、キツネに言いました。 「俺、あんたと遊べないよ。飼いならされちゃいないんだから」と、キツネが言いました。 「そうか、失敬したな」と、王子様が言いました。 でも、じっと考えた後で、王子様は、言いました。「,飼いならす,って、それ、何のことだい,, 「あんた、ここの人じゃないな。何探してるのかい,」 「人間探してるんだよ。,飼いならす,って、それ、何のことだい,, 「人間ってやつぁ、てっぽうもってて、狩をするだから、俺達、まったく手も足も出ないよ。ニワトリも飼ってるんだが、それより他には、人間ってやつゃ、趣味がないときてるんだ。あんた、ニワトリさがしてるのかい,」 「違う、友達を探してるんだよ。,飼いならす,って、それ何のことだい,, 「よく忘れられてる事だがね。,仲良くなる,って言う事さ 「仲良くなる,」 「うん、そうだとも。俺の目から見ると、あんたは、まだ、今じゃ、他の十万もの男の子と、別に変わりない男の子なのさ。だから、おれは、あんたがいなくたっていいんだ。あんたも、やっぱり、俺がいなくたっていいんだ。あんたの目から見ると、俺は、十万ものキツネとおんなじなんだ。だけど、あんたが、俺を飼いならすと、俺達は、もう、お互いに、離れちゃ居られなくなるよ。あんたは、俺にとって、この世でたった一人の人になるし、俺は、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ……」と、キツネが言いました。 「なんだか、話がわかりかけたようだね」と、王子様が言いました。「花が一つあってね……。そのお花が、僕になついていたようだけど……」 「かも知れないな。地球の上にゃ、いろんなことがあるんでねえ……」と、キツネが言いました。 「地球の上の話してるんじゃないんだよ」と、王子様が言いました。 すると、きつねは、王子様の話に、たいそうつりこまれたようすでした。「他の星の上での話かい,」 「うん」 「その星の上にゃ、かりうどがいるかい,」 4 5 「いないよ、そんな人」 「そいつぁ、面白いね。じゃ、ニワトリは,」 「いないよ、そんなもの」 「いや、どうも思いどおりにゃあ、いかないもんだな」と言って、キツネは、ため息をつきました。でも、キツネは、また、話を元に戻りしました。「おれ、毎日同じ事して暮らしているよ。俺がニワトリを追っかけると、人間のやつが、俺を追っかける。ニワトリがみんな似たり寄ったりなら、人間のやつが、またみんな似たり寄ったりなんだから、俺は、少々退屈してるよ。だけど、もし、あんたが、俺と仲良くしてくれたら、俺は、お日様にあたったような気持ちになって、暮らして行けるんだ。足音だって、今日まで聞いてきたのとは、違ったのが聞けるんだ。他の足音がすると、俺は、穴の中にすっこんでしまう。でも、あんたの足音がすると、俺は、音楽でも聞いてる気持ちになって、穴の外へはいだすだろうね。それから、あれ、見なさい。あの向こうに見える麦畑はどうだね。俺は、パンなんかくやしない。麦なんて、なんにもなりゃしない。だから麦畑なんか見たところで、思い出す事って、なんにもありゃしないよ。それどころか、俺はあれ見ると、気がふさぐんだ。だけど、あんたのその金色の髪は美しいなあ。あんたがおれと仲良くしてくれたら、俺にゃ、そいつが、素晴らしいものに見えるだろう。金色の麦を見ると、あんたを思い出すだろうな。それに、麦を吹く風の音も、俺にゃ嬉しいだろうな……」キツネは黙って、長いこと、王子様の顔をじっと見ていました。「なんなら……俺と仲良くしておくれよ」と、キツネがいいました。 「ぼく、とても仲良くなりたいんだよ。だけど、ぼく、あんまり暇がないんだ。友達も見つけなけりゃならないし、それに、知らなけりゃならない事が、沢山あるんでねえ」 「自分のものにしてしまった事でなけりゃ、なんにもわかりゃしないよ。人間ってやつぁ、いまじゃ、もう、なにも分かる暇がないんだ。あきんどの店でできあいの品物を買ってるんだがね。友達を売り物にしているあきんどなんて、ありゃしないんだから、人間のやつ、今じゃ、友達なんかもってやしないんだ。あんたが友達が欲しいんなら、俺と仲良くするんだな」 「でも、どうしたらいいの,」と、王子さまが言いました。 キツネが答えました。「辛抱が大事だよ。最初は、俺から少し離れて、こんなふうに、草の中に座るんだ。俺は、あんたをちょいちょい横目で見る。あんたは、なんにも言わない。それも、言葉っていうやつが、勘違いの元だからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへ来て、座るれようになるんだ……」 あくる日、王子さまは、またやってきました。すると、キツネが言いました。「いつも、同じ時刻にやってくる方がいいんだ。あんたが午後四時にやって来るとすると、おれ、三時には、もう、嬉しくなりだすというものだ。そして、時刻がたつにつれて、俺は嬉しくなるだろう。四時には、もう、おちおちしていられなくなって、俺は。、幸福のあり難さを身にしみて思う。だけど、もし、あんたが、いつでも構わずやってくるんだと、いつ、あんたを待つ気持ちになっていいのか、てんでわかりッこないからなあ……決まりがいるんだよ」 「きまりって、それ何かい,」と、王子様が言いました。 5 6 「そいつがまた、とかくいいかげんにされているやつだよ」と、キツネが言いました。「そいつがあればこそ、一つの日が、他の日と違うんだし、一つの時間が、他の時間と違うわけさ。俺を追っかける狩人にだって、やっぱりきまりがあるよ。木曜日は、村の娘達と踊るんだから、木曜日ってやつが、俺には、素晴らしい日なんだ。その日になると、俺は、葡萄畑までのして出るよ。だけど、狩人たちが、いつだって構わず、踊るんだったら、どんな日もみんなおんなじで、おれは、休暇なんてものが無くなっちまうんだ」 王子様は、こんな話をし合っているうちに、キツネと仲良しになりました。だけれど、王子様が、別れていく時刻が近づくと、キツネが言いました。「ああ~……きっと、おれ、泣いちゃうよ」 「そりゃ、君のせいだよ。僕は、君にちっとも悪い事しようとは思わなかった。だけど君は、僕に仲良くしてもらいたがったんだ」 「そりゃ、そうだ」と、キツネが言いました。 「でも、きみは、泣いちゃうんだろ~」と、王子様が言いました。 「そりゃ、そうだ」と、キツネが言いました。 「じゃ何にもいいことはないじゃないか」 「いや、ある。麦畑の色があるからね」 それから、キツネはまた、こうも言いました。「もう一度、バラの花を見に行ってご覧よ。あんたの花が、世の中に一つしかない事が分かるんだから。それから、あんたが俺にさようならを言いに、もう一度、ここに戻ってきたら、俺はおみやげに、一つ秘密を贈り物にするよ」 王子様は、もう一度バラの花を見にいきました。そして、こう言いました。「あんた達、僕のバラの花とは、まるっきり違うよ。それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか。だあれも、あんた達とは仲良くしなかったし、あんた達のほうでも、誰とも仲良くしなかったんだからね。僕がはじめて出くわした時分のキツネと同じさ。あのキツネは、始め、十万ものキツネとおんなじだった。だけど、今じゃ、もう、僕の友達になってるんだから、この世に一匹しかいないキツネなんだよ」 そう言われて、バラの花たちは、たいそうきまりわるがりました。 「あんた達は美しいけど、ただ咲いてるだけなんだね。あんた達のためには、死ぬ気になんかなれないよ。そりゃ、僕のバラの花も、なんでもなく、そばを通って行く人が見たら、あんた達とおんなじ花と思うかもしれない。だけど、あの一輪の花が、僕には、あんた達みんなよりも、大切なんだ。だって、僕が水をかけた花なんだからね。覆いガラスもかけてやったんだからね。ついたてで、風にあたらないようにしてやっただからね。毛虫をーー二つ、三つは蝶になるように殺さずに置いたけどーー殺してやった花なんだからね。不平も聞いてやったし、自慢話も聞いてやったし、黙ったいるならいるで、時には、どうしたのだろうと、聞き耳を立ててやった花なんだからね。僕のものになった花なんだからね」 バラの花たちにこう言って、王子様は、キツネのところに戻ってきました。「じゃ、さようなら」と、王子さまは言いました。 「さようなら」と、キツネが言いました。「さっきの秘密を言おうかね。なに、なんでもない事だよ。心で見なくちゃ、物事はよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだよ」 6 7 「肝心な事は、目には見えない」と、王子様は、忘れないように繰り返しました。 「あんたが、あんたのバラの花をとても大切に思ってるのはね、そのバラの花の為に、時間を無駄にしたからだよ」 「ぼくが、僕のバラの花を、とても大切に思うってるのは……」と、王子さまは、忘れないように言いました。 「人間って言うものは、この大切な事を忘れてるんだよ。だけど、あんたは、この事を忘れちゃいけない。面倒見た相手には、いつまでも責任があるんだ。守らなけりゃならないんだよ、バラの花との約束を寝……」と、キツネが言いました。 「僕は、あのバラの花との約束を守らなけりゃいけない……」と、王子さまは忘れないように繰り返しました。 「こんにちは」と、王子様が言いました。 「こんにちは」と、転轍手(スイッチマン)が言いました。 「なにしてるの、ここで,」と、王子様が言いました。 「旅客を、千人ずつ荷物にして、選り分けてるんだよ。俺の送り出す汽車が、旅客を右に運んでいったり、左に運んでいったりするんだ」と、スイッチマンが言いました。 そこへ、キラキラとあかりのついた特急が、雷のようにごうごうと、転轍小屋を震わせて行きました。 「みんな大変急いでるね。なに探してるの、あの人たち,」 「それ、機関車に乗ってる男が知らないんだよ」 すると、また、もう一つのキラキラとあかりのついた特急が、今度は、反対の方向へごうごうと走ってゆきました。 「みんなもう戻ってきたんだね」と、王子様が聞きました。 「あれ、おんなじ客じゃないんだ。すれ違ったんだよ」と、スイッチマンが言いました。 「自分達のいる所が、気にいらなかったって訳かい,」 「人間ってやつぁ、いる所が気に入る事なんて、ありゃしないよ」と、スイッチマンが言いました。 すると、キラキラとあかりのついた三番目の特急が、ごうごうと音を立てて通りました。 「始めのお客を、追っかけてるんだね,」と、王子さまが聞きました。 「何にも追っかけてやしないよ。あの中で眠ってるんでなけりゃあ、あくびしてるんだ。子供たちだけが、窓ガラスに鼻をぴしゃんこに押し付けてるんだよ」 「子供達だけが、何が欲しいか、分かってるんだね。きれで出来た人形なんかで、暇つぶしして、その人形を、とても大切にしているんだ。もし、その人形を取り上げられたら、子供達は、泣くんだ……」 7 8 と、王子さまが言いました。 「子供達は幸福だな」と、スイッチマンが言いました。 「こんにちは」と、王子様が言いました。 「やあ、こんにちは」と、あきんどが言いました。 それは、のどの渇きがケロリと治るという、素晴らしい丸薬を売っているあきんどでした。一週に一粒ずつ、それを飲むと、もう、それきり何も、飲みたくなくなる、と言うのです。 「なぜ、それ、売ってるの,」と、王子さまが言いました。 「時間がえらく倹約になるからだよ。その道の人が計算して見たんだがね、一週間に五十三分、倹約になると言うんだ」と、あきんどが言いました。 「で、その五十三分って時間、どうするの,」 「したい事をするのさ……」 ,僕がもし、五十三分って言う時間をすきに使えるんだったら、どこかの泉のほうへ、ゆっくり歩いて行くんだがなあ,と、王子さまが思いました。 僕の飛行機が、砂漠の中で故障してから八日目、もう一滴しか残っていない貯えの水を飲みながら、丸薬商人の話に耳をすました僕は、王子様に向かって、こう言いました。「実に面白い話だ。だけど、まだ飛行機の修繕が出来ていないし、それに飲み水が、もう一滴もない、このありさまなんだ。だから、僕も、どこかの泉のほうへ、ゆっくりゆっくり歩いていけたら、嬉しいんだがなあ~」 「僕の友達のキツネがね……」と、王子様は、僕に言いました。 「坊ちゃん、もう、キツネどころじゃないんだよ」 「なぜ,」 「だって、のどが渇いて死にそうだもの……」 王子様は、ぼくの言うことが飲み込めなくて、こう、僕に答えました。「死にそうになっても、一人でも友達がいるのは、いいものだよ、僕はね、キツネと友達になれて、ほんとに嬉しいよ……」 この坊ちゃん、どんなに危ない事になってるか、分かっていないんだ。ひもじい思いをした験しもないし、のどが渇いた験しもないんだ。本のちょっと、日の光が差してくれば、それで満足してるんだ、と、ぼくは、考えました。 が、王子様は、じっと僕を見ました。そして、僕の心のうちを思いやったらしく、こう言いました。「僕も水が飲みたいから……井戸を探そうよ……」 ぼくは、疲れたような身振りをしました。こんな果てしない砂漠の中で、行き当たりばったり井戸を探すなんて、ばかげた事だと思ったからです。それでも、僕たちは歩き出しました。 僕達が、何時間か黙って歩いていると、日が暮れて、星が光り始めました。僕は、のどが渇いて、少し 8 9 熱があるようなので、まるで夢でも見ているように、星の光を眺めていました。王子様のいったことが、僕の記憶の中で踊っていました。 「水が飲みたいの、君も,」と、僕は王子様に聞きました。が、王子様は、僕の聞いた事に答えません。ただ、こう言ったきりでした。「水は心にもいい物かもしれないな……」 王子様が、なぜそういう返事をしたのか、分からなかったのでしたが、それでも、僕は口をつぐみました……王子様に、そのわけを聞いても仕様がないことが、よく分かっていたからです。 王子様は、くたびれていました。腰をおろしました。僕はそのそばに腰をおろしました。すると、王子さまは、しばらく黙っていたあとで、また、こう言いました。「星があんたに美しいのも、目に見えない花が一つあるからだよ……」 僕は,そりゃ、そうだ,と、答えました。それから何にも言わずに、でこぼこの砂が、月の光を浴びているのを眺めていました。 「砂漠は美しいな……」と、王子様は続いて言いました。 まったくその通りでした。ぼくは、いつも砂漠が好きでした。砂山の上に腰をおろす。何にも見えません。何にも聞こえません。だけれど、なにかが、ひっそりと光っているのです。 「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ……」と、王子様が言いました。 突然、僕は、砂がそんなふうに、不思議に光る訳が分かって驚きました。ほんの子供だったころ、僕はある古い家に住んでいたのですが、その家には、何か宝が埋められていると言う、言い伝えがありました。もちろん、誰もまだ、その宝を発見した事もありませんし、それを探そうとした人もないようです。でも、家中が、そのたから出美しい魔法にかかっているようでした.僕の家はその奥に一つの秘密を隠していたのです。 「そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」と、僕は王子様に言いました。 「嬉しいな、きみが、僕のキツネとおんなじことを言うんだから」と、王子様が言いました。 王子様が眠りかけたので、僕は両腕で抱えて歩き出しました。僕は心を揺す振られていました。まるで、壊れやすい宝を、手に持っているようでした。地球の上に、それより壊れやすいものは、何もないようにさえ、感じられるのでした。僕は、月の光で、王子様の青白い顔を見ていました。ふさいでいる目を見ていました。ふさふさした髪の毛が、風にふるえているのを見ていました。そして、いま、こうして目の前に見ているのは、人間の外側だけだ、一番大切なものは、目に見えないのだ……と思っていました。 王子様の唇が、心もち開いて、どこともなしに笑顔が見えるのです。僕はまたこう思いました。,この王子様の寝顔を見ると、僕は涙の出るほど嬉しいんだが、それも、この王子様が、一輪の花をいつまでも忘れずにいるからなんだ。バラの花の姿が、眠っている間も、ランプの灯のようにこの王子様の心の中に光っているからなんだ……, すると、僕は王子様が、いよいよ壊れやすい人のように見えてきました。ともし火は、大切にしましょう。風がさっと吹いてきたら、その灯が消えるかもしれませんからね……こんな事を考えながら歩いて 9 10 いくうちに、僕は夜が明けろころ、とうとう井戸を発見しました。 王子様は言いました。「みんなは特急列車に乗り込むけど、今ではもう、何を探してるのか、分からなくなってる。だからみんなは、そわそわしたりどうどうめぐりなんかしてるんだよ……」 それからまた、続けて言いました。「ご苦労様な話だ……」 僕たちが行き着いた井戸は、サハラ砂漠にある井戸らしくはありませんでした。サハラ砂漠の井戸は、ただの穴が、砂地に掘られているだけのものです。ところで、僕たちの発見した井戸は、村にあるような井戸でした。でも、あたりには、村なんか、一つもありません。僕は、夢を見ている気持ちでした。 「変だな、みんな用意してある。車も、つるべも、綱も……」と、僕は王子さまに言いました。 王子さまは笑いました。そして、綱に手をかけて、井戸の車を動かしました。すると、車が、うめくように響きました。長い事、風に吹かれずにいる、古い風見のようにギイときしりました。 ほら、この井戸が、目を覚まして歌ってるよ」 僕は王子様に骨を折らせたくなかったので、言いました。「僕が汲んであげるよ、君には重すぎるから」 僕はゆっくりと、つるべを井戸のふちまで引き上げました。そして、それを井戸がわに、ちゃんと置きました。僕の耳には、車のカラカラ言う音が、ずっと聞こえているし、まだ揺れている井戸水には、日の光が、キラキラと映っていました。 「ぼく、その水が欲しいな、飲ましてくれない,」僕は、王子さまが何を探してるいたのか、分かりました。僕は釣る瓶を、王子様の唇に持ち上げました。すると、王子様は、目をつぶったまま、ごくごくと飲みました。 お祝いの日のご馳走でも食べるように、うまかったのです。その水は、食べ物とは、別なものでした。星空の下を歩いた後で、車がきしるのを聞きながら、僕の腕に力を入れて、汲み上げた水だったのです。だから、何か贈り物でも受けるように、しみじみと嬉しい水だったのです。僕は、ほんの子供だったころ、僕のもらうクリスマスの贈り物も、クリスマス?ツリーにはろうそくが光っているし、真夜中のミサの音楽は聞こえるし、人たちが春のようににっこりしているしするので、いよいよキラキラと目に映りました。 「君の住んでるとこの人たちったら、同じ一つの庭で、バラの花を五千も作ってるけど、……自分達が何が欲しいのか、分からずにいるんだ」と、王子様が言いました。 「うん、分からずにいる……」と、僕は答えました。 「だけど、探してるものは、たった一つのバラの花中にだって、少しの水にだって、あるんだがなあ……」 「そうだとも」と、僕は答えました。 すると、王子さまはまた続けて言いました。「だけど、目では、何も見えないよ。心で探さないとね」 僕は水を飲んで、ほっとしました。夜明けの砂地は、蜜のような色になるものです。僕はその蜜のような色を、いい気持ちになって眺めていました。苦労するわけなんか、どこにもありませんでした。 「君は約束守らなくちゃ」と、静かにいった王子さまは、また、僕のそばに来て腰をおろしていました。 10 11 「約束って,」 「ほら……僕のヒツジにはめてやる口輪のことさ。ぼく、どんな事になったって、あの花をほっとくわけに行かないんだ物」 僕は、ポケットから、書きなぐったいろいろな絵を出しました。王子様は、それを見ると、笑いながら言いました。「君の描いたバオバブったら、なんだか、キャベツみたいだな」 「酷いなあ~」ずいぶん得意になって描いたバオバブだったのに…… 「これ、キツネだな……このみみったら……なんだか角みたいだね……あんまり長すぎるよ」そして、また王子さまは笑いました。 「坊ちゃん、酷いよ、そりゃ。ウワバミの内側と外側でなくちゃ、何にも描けなかった僕なんだからね」 「なに、それで、けっこうだよ。子供には分かるんだから」 ぼくは、そこで口輪を鉛筆で描きました、でも、それを王子様に渡すとなると、胸にいっぱいになりました。「きみは、いろんなことをしようとしているんだ、僕の知らない……」が、王子様は、僕がそう言ったことには答えずに、こう言いました。「ね、僕は、この地球に降りて来たろ,……明日は一年目の記念日なんだよ……」それからしばらく黙っていた後で、王子様は、またこう言いました。「僕、ここのすぐ近くに降りてきたんだった……」 そして王子様は、顔を赤くしました。 すると、僕はなぜか訳は分からずに、また、変に悲しくなりました。そして、また一つ、聞く事を、思いつきました。 「一週間前の朝、僕が君と知り合ったとき、 君は、人の住んでるところから、千マイルも離れたところを、あんなに日とりぽっちで歩いていた。じゃ、あれも、ただ、そうやっていたわけじゃなかったんだね。君は、降りてきたところへ、またいきかけていたんだね,」 王子様は、また、顔を赤くしました。で、僕は、もじもじしながら、続けて言いました。「記念日だったからだろうね,……」 王子様は、また顔を赤くしました。何か、聞かれても、王子様は、それに答えた事がないのです。が、人が顔を赤くしたら、それは、,そうだ,と言う意味ではないでしょうか。 「ああ、ぼく、少し怖くなった……」 しかし、王子様は、僕にこう言うのでした。 「さあ、もう、仕事をしなくちゃいけないよ。飛行機のところへ行ってね。ぼく、ここで待ってるよ。また来てね、明日の夕方……」が、僕は、落ち着いてはいられませんでした。キツネのことを思い出していたのです。仲のよい相手ができると、人は、何かしら泣きたくなるのかもしれません。 井戸のそばには、古い壊れた石垣がありました。あくる日の夕方、僕が仕事から戻ってくると、僕の王子さまが、壊れた石垣の上に、両足をぶらりとたれて、腰をおろしているのが、遠くから見えました。すると、こう言っている王子様の声が聞こえました。 11 12 「じゃあ、覚えていないのかい,どうもここじゃなさそうだよ」 ほかの声が、きっとどこかで、答えたのでしょう。王子様が、すぐこう言ったのですから。 「そうだよ、そうだよ~今日だったんだよ。だけど、場所はここじゃないんだ……」 僕は、ずっと石垣のほうに歩いてゆきました。いくら歩いていっても、誰の姿も見えませんし、誰の声も聞こえません。が、王子様は、また言いました。 「……その通りだよ。砂の中の、僕の足跡が、どこで始まってるか、見ておくれ。僕を、そこで待っていさえすればいいんだ。今夜、そこへいくんだから」 僕は、石垣から二十メートルのところにいましたが、やっぱり何にも見えません。王子さまは、しばらく黙っていたあとで、また言いました。 「君、いい毒、持ってるね。きっと、ぼく、長い事苦しまなくていいんだね」 僕は、胸が潰れるような気がして立ち止まりました。しかし、やっぱり何の事か分かりません。 「さあ、もう、向こうへ行って……ぼく、下へ降りたいんだ~」 その時、ぼくはぼくで、石垣の根元のほうを見下ろして、はっと飛び上がりました。そこには、三十秒の間に、人の命を断ち切る、黄色いヘビが一匹、王子様の方へ、かまくびをつき立てていました。ピストルを取り出そうと、ぼくはポケットのうちを探りながら、駆け出しました。しかし、ヘビは、ぼくの足音を聞くと、噴水の水がだんだん上がらなくなるように、すうーっと、砂の中へ滑り込みました。そして、今度は、そんなに急いでいる様子もなく、金物を引きずるような軽い音を立てて、石と石との間に潜り込みました。 石垣のところへ行き着いたとき、丁度うまく降りて来る王子様を、ぼくは、両腕で受け止めました。その顔は、雪のように白くなっていました。 「いったい、どうしたって言うのかい,今度はヘビと話するなんて~」 ぼくは、王子さまが、いつも首に巻いている金色のえりまきを解きました。こめかみをしめして、水を飲ませました。ことがこうなっては、ぼくは、もう、王子さまに、何にも聞く勇気がありません。まじめな顔で、ぼくを見詰めていた王子様は、両腕を、ぼくの首に絡ませました。王子様の心臓は、鉄砲で打たれて、息も絶えそうになっている鳥の心臓のように、鼓動していました。王子様は、ぼくに、こう言いました。 「機械のいけない所が見つかってよかったね。これで、君は、家へ帰っていけるんだ……」 「どうして知ってるの、そんな事,」 ぼくは、とても駄目だろうと思っていた仕事が、うまく行ったことを、ちょうど知らせようと思って、来た所でした。 王子様は、ぼくの聞いた事には、なんにも答えません。が、続けて、こう言いました。 「ぼくも、今日、家に帰るよ……」 それから、悲しそうにーー 「でも、きみんところより、もっともっと遠いところなんだ……もっともっと骨が折れるんだ……」 王子様が、こういうのでは、その身の上に、何か、並大抵でない事が、持ち上がっているに違いありま 12 13 せん。でぼくは、赤ん坊でも抱くように、しっかと抱きしめましたが、王子様の体は、どこかの深い淵にまっさかさまに落ちていって、引き止めるにも引き止められないような気がしました……王子様は、遠い所で迷子にでもなったように、きっとした目をしていました。 「ぼく、君が描いてくれたヒツジも持ってる。ヒツジを入れる箱も持ってる。それから口輪も……」 そして、王子様は、淋しそうに、にっこりしました。 ぼくは、長いこと、ようすを見ていました。王子様は少しずつ、元気づいてゆくようです。 「坊ちゃん、きみ、怖かったんだね……」 王子様は、怖かったのです。それに間違いありません。けれど、王子様は、静かに笑っています。 「ぼく、今夜は、もっともっと、怖い思いをするんだ……」 ぼくは、もう、とうにも取り返しがつかない事が起こりそうな気がして、また、胸のうちが冷たくなりました。王子様の、あの笑い声が、もう、二度とは聞かれなくなるのだ、と思う事さえ、辛抱できないことが分かりました。 王子様のあの笑い声を聞くことは、砂漠の中で泉の水を見つけると同じだったからです。 「坊ちゃん、ぼく、あんたのあの笑い声が、もっと聞きたいんだ……」 けれど、王子様は、ぼくにこういいました。 「今夜で一年になる。ぼくの星は、去年、ぼくが降りてきたとこの、丁度真上に来るよ……」 「坊ちゃん、そりゃ、ありもしない事言ってるんじゃないのかい、ヘビだの、待ち合わせの場所だの、星だのって言う、その話……,ね、そうだろう……」 けれど、王子様は、ぼくが聞いた事には答えないで、こう言いました。 「大切な事はね、目に見えないんだよ……」 「うん、そうだね……」 「花だって同じだよ。もし、君が、どこかの星にある花が好きだったら、夜、空を見あげる楽しさったらないよ。どの星も、みんな、花でいっぱいだからねえ」 「うん、そうだね……」 「水だって同じさ。君がぼくに飲ませてくれたあの水ったら、車と綱で、汲み上げたんで、音楽を聞くようだったね……ほら……うまい水だったじゃないか」 「うん、そうだね……」 「夜になったら、星を眺めておくれよ。ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、君に見せる訳にはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。君は、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思って眺めるからね。すると、君は、どの星も、眺めるのが好きになるよ。星がみんな、君の友達になるわけさ。それから、ぼく、君に贈り物を一つあげる……」 王子様は、また笑いました。 「坊ちゃん、坊ちゃん、ぼく、その笑い声聞くのが好きだ」 「それが、ぼくの、今言った贈り物さ。ぼく達が水を飲んだときと、同じだろう」 「それ、どういうこと,」 13 14 「人間は皆、違った目で星を見てるんだ。旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。ちっぽけな光くらいにしか思っていない人もいる。学者の人達の内には、星を難しい問題にしている人もいる。僕の会った実業屋なんかは、金貨だと思ってた。だけど、相手の星は、皆、何にも言わずに黙っている。でも、君にとっては、星が、ほかの人とは違った物になるんだ……」 「それ、どういうこと,」 「僕は、あの星の中の一つに住むんだ。その一つの星の中で笑うんだ。だから、君が夜、空を眺めたら、星が皆笑ってるように見えるだろう。すると、君だけが、笑い上戸の星を見るわけさ」 そして、王子様はまた笑いました。 「そして、君は、今に悲しくなくなったらーー悲しい事なんか、いつまでも続きゃしないけどねーー僕と知り合いになって良かったと思うよ。君はどんな時にも、僕の友達なんだから、僕と一緒になって笑いたくなるよ。そして、たまには、そう、こんなふうに、部屋の窓を開けて、ああ、嬉しい、と思う事もあるよ……そしたら、君の友達達は、君が空を見上げながら笑ってるのを見て、びっくりするだろうね。そのときは、,そうだよ、僕は星を見ると、いつも笑いたくなる,って言うのさ。そしたら、友達達は、君がきちがいになったんじゃないかって思うだろう。すると僕は、君にとんだいたずらをしたことになるんだね……, 王子様は、また笑いました。 「そうすると、僕は星の替わりに、笑い上戸のちっちゃい鈴を沢山、君にあげたようなものだろうね……」 王子様はまた笑いました。が、やがてまた、まじめな顔になって言いました。 「今夜はね、やってきちゃいけないよ」 「ぼく、君のそば、離れないよ」 「僕、病気になってるような顔しそうだよ……なんだか、生きてないような顔をしそうだよ。うん、そうなんだ。だから、そんな様子、見に来たってしょうがないじゃないか……」 「ぼく、君のそば、離れないよ」 そう言っても王子様は、心配そうな顔をしています。 「ぼく、こんなこと言うの……ヘビの事もあるからだよ。君に噛み付いちゃいけないからさ……。ヘビのやつ、意地悪なんだから。面白がって、噛み付くかもしれないんだよ……」 「ぼく、君のそば、離れないよ」 王子様は、何かしら思いついて、安心したように見えました。 「そうだ、ヘビのやつ、二度目に噛み付くときには、もう、毒がないんだっけ……」 その夜、王子様が出かけたのを、僕は気がつきませんでした。足音一つ立てずに、姿を隠したのです。あとを追って、首尾よく追いつきますと、王子様は、もう、腹を決めたらしく、足早に歩いていました。そして、こう言っただけでした。 「ああ、君が……」 王子様は、僕の手を取りましたが、また、心配でたまらなそうに言いました。 14 15 「来ないほうが良かったのに。それじゃつらい思いをするよ。僕、もう死んだようになるんだけどね、それ、ほんとじゃないんだ……」 僕は、黙っていました。 「ね、遠すぎるんだよ。ぼく、とてもこの体、持ってけないの。重すぎるんだもの」 僕は黙っていました。 「でも、それ、そこらに放り出された古い抜け殻と同じなんだ。かなしかないよ、古い抜け殻なんて……」 僕は黙っていました。 王子様は、少し、気が挫けたようでしたが、また、気持ちを引き立てて、言いました。 「ね、とても良い事なんだよ。僕も星を眺めるんだ。星が皆、井戸になって、錆付いた車が付いてるんだ。そして、僕にいくらでも、水を飲ましてくれるんだ」 僕は黙っていました。 「ほんとに面白いだろうなあ~君は五億も鈴を持つだろうし、僕は、五億も、泉を持つことになるからねえ……」 そして、今度は王子様も黙ってしまいました。泣いていたからです。 「だからね、構わず、僕を一人で行かせてね」と言って、王子様は腰をおろしました。怖かったからです。 それからまた、こう言いました。 「ねえ、僕の花……僕、あの花にしてやらなくちゃならない事があるんだ。ほんとに弱い花なんだよ。ほんとに無邪気な花なんだよ。身の守りと言ったら、四つのちっぽけな刺しか、持っていない花なんだよ……」 僕も腰をおろしました。立っていられなくなったからです。 王子様は言いました。 「さあ、もう、何にも言う事はない……」 王子様は、また、何か、もじもじしていましたが、やがて立ち上がりました。そして、一足、歩きました。僕は動けませんでした。 王子様の足首のそばには、黄色い光が、キラッと光っただけでした。王子様は、ちょっとの間、身動きもしないでいました。声一つ、立てませんでした。そして、一本の木が倒れでもするように、静かに倒れました。音一つ、しませんでした。あたりが、砂だったものですから。 さて、今となって見ると、もう、確かに六年前の事です……。僕は、この話を、まだ、誰にもした事がありません。その後、僕に会った友人達は、僕が生きているのを見て、大変喜びました。僕は、悲しかったのですけれど、友人達には、,何しろ、疲れてるんでね……,と、言っていたものです。 今となっては、悲しいには、悲しいのですが、いくらか諦めがつきました。と言ったところで……すっ 15 16 かり諦めがついた、という訳ではありません。でも、王子様が、自分の星に帰った事は、よく知っています。なぜなら、夜が明けたとき、どこにも、あの体が見つからなかったからです。たいして、重いからだではなかったのです……。僕は夜になると、空に光っている星たちに、耳をすますのが好きです。まるで五億の鈴が、鳴り渡っているようです……。 ところで、どうでしょう。こんな、大変な事があるのです。僕は、王子様の注文で、口輪の絵を描いたのですが、それに、皮ひもを付ける事を忘れたのです。だから、王子様は、とても、ヒツジに口輪をはめさせるわけに、いかなかったでしょう。 そこで、僕は、,王子様の星の上では、いったい、どんな事が、持ち上がったかしら。ヒツジが花を食ったかもしれない……,などと考えています。 日によると、僕が、,そんな事があるものか。王子様は、夜になると、いつも大切な花に覆いガラスをかけて、ヒツジが寄り付かないように、よく目をくばっているのだ……,と思う事があります。すると、僕は安心します。そして、空の星がみな、さも楽しそうに笑うのです。 また、日によっては,一度やそこら、うっかりする時があるものだが、そしたら、もう、お仕舞いだ。王子様は、ある日の晩方、覆いガラスをかける事を忘れたか、そうでなけりゃ、ヒツジが、夜そっと外へ出たのだ……,と思う事もあります。そうなると、鈴がみな、涙になってしまうのです~…… まったく、不思議な事なのです。あの王子様を愛しているあなた方と、僕にとっては、僕たちの知らない、何処かのヒツジが、何処かに咲いているバラの花を、食べたか、食べなかったかで、この世界にあるものが、何もかも、違ってしまうのです…… 空を御覧なさい。そして、あのヒツジは、あの花を食べたのだろうか、食べなかったのだろうか、と考えて御覧なさい。そうしたら、世の中の事がみな、どんなに変わるものかお分かりになるでしょう……。 そして、大人たちには、誰にも、それがどんなに大事な事か、決して分かりっこないでしょう。 これが、僕にとっては、この世の中で一番美しくって、一番悲しい景色です。前のページにあるのと、同じ景色ですけれど、皆さんによくお見せしようと思って、もう一度描きました。王子様が、この地球の上に姿を見せて、それからまた、姿を消したには、ここなのです。 もしあなた方が、いつかアフリカの砂漠を旅行なさるような事があったら、すぐ、ここだな、と分かるように、この景色をよく見て置いてください。そして、もし、この所を、お通りになるようでしたら、お願いですから、お急ぎにならないで下さい。そして、この星が、ちょうど、あなた方の頭の上に来るときを、お待ち下さい。その時、子供が、あなた方のそばに来て、笑って、金色の髪をしていて、なにを聞いても、黙りこくっているようでしたら、あなた方は、ああ、この人だな、と、確かにお察しがつくでしょう。そうしたら、どうぞ、こんな悲しみに沈んでいる僕を慰めてください。王子様が戻ってきた、と、一刻も早く手紙を書いてください……。 16
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